セクシャルウェルネスに不可欠の「フェムテック」日本では社内の自販機で販売 | 海外では「偏見により大きな不利益」

公開日: 21/02/2025

Un couple qui s'est rencontré sur Noulib se donne la main

女性の性や健康問題を技術で解決するフェムテックが広がりを見せています。日本では、大手企業の社内でフェムテック製品に関する自動販売機が設置されたり、国がデータを集めて医学的な知見を蓄積しようとする動きがでています。女性のためのセクシャル・ウェルネスに不可欠な「フェムテック」分野での国内外の動きをご紹介します。

そもそもフェムテックとは?

フェムテック(Femtech)とは、「女性(Female)」と「技術(Technology)」を組み合わせた造語で、女性の健康やセクシャルウェルネスに焦点を当てた製品やサービス、ソフトウェアを指します。月経管理アプリや妊活サポートデバイス、更年期障害のケア用品など、多岐にわたる分野で革新的な製品が開発されています。この中でもセクシャルウェルネスは世界保健機関(WHO)も注目し、「セクシュアルウェルネスは、個人、カップル、家族の全体的な健康と幸福、そして地域社会と国の社会的および経済的発展の基本」と定義しています。

海外では著名セレブが積極的にセクシャルウェルネスを発信しており、セルフプレジャーの特に美容的な側面が注目されています。

こうした注目の高まりを背景に、フェムテックは性的な快楽におけるセックストイへの広がりも見せており、従来のデザインよりもより女性に親しみのある形やサイズが設計され、女性目線のプロダクトが多く誕生しています。

近年ではセックストイにデータ分析機能やIoT(モノのインターネット)も搭載された製品も注目を集めています。
この分野の成長は、テクノロジーの進化とともに、これまで十分に注目されてこなかった女性特有の健康問題に対する関心の高まりが背景にあります。

セックスとフェムテック

そのため、ただ技術的な側面だけではなく、セックスに関してオープンな議論を促すことによって女性からの支持を得ているブランドもあります。さらにはバイブにサステナブルな視点を取り入れるなどSDGSの側面を強調しているアイテムも。
大手ファッション誌のVogueによると、性に関する議論がいまだタブー視される韓国では、女性がバッグの中に入れても恥ずかしくないコンドーム「EVE」が開発されています。これは従来の男性的なデザイン面の変更とともに、動物実験を行なわず、動物由来の成分も含まない「クルーエルティフリー」であることや、環境に優しい製品であることなど倫理面、そしてもちろん女性にとって安全な商品を開発しました。

EVEはコンドームのみならず、、サステナビリティと安全性に配慮した、月経カップと生理用パンツを発表。どちらも繰り返し使えることで環境への負荷を軽減するなど、女性が利用する際の抵抗感を軽減しています。

日本では企業内に自動販売機の設置も

日本国内でも、フェムテック製品がより身近に、より簡単に購入できるようになっています。大手企業のオフィス内にフェムテック製品を販売する自動販売機が設置されるなど、働く女性が気軽に必要なアイテムを手に入れられる環境が整いつつあります。
2024年10月21日の日経新聞によると、伊藤忠商事はフェムテック製品を従業員や訪問客に販売する自動販売機を本社に設置しました。同社はこれまでにも社内の店舗で販売していましたが、「他の社員の視線が気になり、購入しづらい」ことから自動販売機を置くことになったそうです。やはり日本では公に性に関する製品を購入することへの抵抗は大きいのかもしれません。

しかし、企業がセクシャルウェルネスに注力し、フェムテック関連の商品を社員が手に入りやすい環境整備が今後も増えていくことで、こうした抵抗感も少なくなっていくことでしょう。企業が従業員の健康とウェルネスを重視し、多様なニーズに対応しようと取り組むことは、職場でのストレスや健康問題の軽減にも繋がりそうです。

なお、伊藤忠商事の自動販売機では、乳がんを発見するための検診用手袋や妊娠時の吐き気やむかつきを緩和するためのリストバンドを扱っているとのことです。

フェムテックに医学的根拠を

企業だけでなく、国もフェムテックへの支援に動いています。

日本では、2024年10月から国が「女性の健康総合センター」を設置するなどして女性の健康に関するデータを集めて、診療に活かすことが進められています。同センターでは、性差医療に関するデータの収集や分析、情報発信を行っています。

朝日新聞はセンター開設に合わせて、センター長である小宮ひろみ医師にインタビューしています。インタビューの中で「フェムテックのような「ジェンダード・イノベーション(性差の理解に基づく技術革新)」に、医学的なエビデンス(根拠)を入れていくことも求められていると思います。」とあるように、まだまだフェムテックに足りないとされる医学的な知見も今後はより蓄積され、より女性が利用しやすい製品が生まれてくるかもしれません。

海外のフェムテック事情

海外でもフェムテックは急速に成長していますが、業界全体として今後も持続的に成長するための課題も指摘されています。
ガーディアン紙の記事では、フェムテックへの投資が医療技術資金全体の1〜2%にすぎないとされており、2011年〜2021年の間に女性特有の健康状態に関連する新しい医療技術薬のうち、米国で承認されたのはわずか4%だったそうです。

この要因として、資金調達において「偏見により大きな不利益」を被っていると報じられています。これは、フェムテック企業が資金調達や市場参入においてバイアスに直面している状況を指しています。

報道によると、フェムテック企業の女性起業家がある資金調達ラウンドで男性と投資家から「潤滑剤は更年期の女性にしか必要ないので資金を出すにはニッチすぎる」と言われたそうです。

潤滑剤は閉経後の女性だけに必要なものではなく、幅広い年齢層の女性や男性も含め、様々な人々が使用するべきアイテムです。例えば、性的快感を高めたり、膣の乾燥に悩む若い女性、さらには性行為における快適さを追求するカップルなど、多くの異なるニーズに応えることができます。

この投資家は潤滑剤の市場を「閉経後の女性だけ」という狭い視点で捉え、それがニッチな市場だと判断しました。このように、女性の健康や快適さに関連する製品がしばしば軽視されたり、誤解されることで、十分な資金やサポートを得られない傾向があるようです。もしもその投資家が男性の健康や快適さに関連する同様の製品であれば、同じような理由で拒否するかどうかは疑問です。

さらに多くのハードルも

さらにフェムテック企業は、資金を確保し製品が市場に出る準備が整っても、男性の健康をターゲットにした企業とは異なる課題に直面します。
自宅で使える不妊治療キット「Béa Fertility」は、Amazonから「膣」や「膣管」という言葉を使用した場合、サイトで製品を販売できないと告げられました。一方で「精液」という言葉は問題ないとのことでした。このため、Béa Fertilityは「膣」という言葉を「産道」に置き換えざるを得なかったそうです。
ガーディアンの記事では、そのほかにもオンライン広告が削除されたり、銀行口座の開設が拒否されるなど、多くのフェムテック起業家が様々な障害にあっていることが紹介されています。
2024年2月のフォーブスの報道でも、フェムテック市場における資金援助が苦戦している状況を伝えています。FemTech は成長機会が限られているニッチ市場であるという根強い偏見があるためだと指摘します。

Miraの共同創業者兼CEOであるシルビア・カン氏によると、「フェムテック分野のスタートアップの70%は女性が設立したものです。それにもかかわらず、男性が設立したフェムテック企業ははるかに多くの資金を調達しています。平均すると、女性が設立したフェムテックのスタートアップは460万ドルを調達していますが、男性所有の企業は920万ドルを調達しています」と男女格差が著しいそうです。
記事内では女性が率いるフェムテックスタートアップの方が業績が優れているにもかかわらず、投資家による偏見が蔓延していると指摘します。
一方で、こうした投資行動には、女性の健康状態に関する研究とデータの不足も影響しているそうです。女性の健康や性に関して不慣れな男性もデータで示されれば投資に動くこともあるかもしれません。

前述したように、日本では医学的な知見が蓄積されていく動きもで始めています。しかし、海外ではまだ政府の支援が不十分な上、女性自身の知識が不足していることも指摘されています。

フォーブスの記事では、多くの女性がホルモンの不均衡とそれがさまざまな健康状態に与える影響に気づいていないと警告します。Mira の共同創設者兼 CEO であるシルビア氏は次のように話しています。

「主な問題は一般の認識不足にあると私は考えています。Miraの調査によると、女性はホルモンについてあまり知らず、多くの健康状態がホルモンの不均衡に関連している可能性があることを認識していません。医療専門家も研究や明確なガイドラインが不足しているため、これらの状態を治療するための効果的な治療計画を提供できないことがよくあります。」

フェムテックが切り開く女性の性の未来

フェムテック市場は、女性の健康問題やセクシャルウェルネスに特化した技術革新の分野として注目を集めています。特に月経管理アプリや妊活デバイス、更年期障害のケア用品など、さまざまな革新的な商品が開発されており、これらのプロダクトは世界的な需要を拡大しています。WHOもセクシャルウェルネスの重要性を強調しており、フェムテックが個人や社会全体の健康に寄与する分野であることが認識されていると言えるでしょう。

日本においても、フェムテック商品が徐々に社会に浸透してきており、企業が従業員の健康をサポートするために自動販売機を設置するなど、職場環境の改善を目指す動きが見られます。また、国レベルでは、女性の健康に関するデータの蓄積とその活用が進められており、フェムテック分野に対する医学的知見の向上が期待されています。

一方、海外ではフェムテック市場における課題も指摘されています。特に、投資におけるジェンダー・バイアスが根強く存在しており、女性が設立した企業が資金調達で男性設立の企業に比べて著しく不利な状況にあります。例えば、セックストイや潤滑剤といった製品に対する市場評価は依然として偏見に基づいており、これがフェムテック企業の成長を妨げる要因の一つとなっています。

こうした課題にもかかわらず、フェムテック分野は確実に成長しています。技術の進化とともに、これまで見過ごされてきた女性の健康問題に対する関心が高まり、女性自身の健康意識が向上してきています。しかし、依然として多くの課題が残されており、特に女性の健康に関する研究の不足や、それに基づくデータの蓄積が求められています。医学的な証拠が不十分な現状では、男性投資家や市場全体がフェムテック分野に対して慎重な姿勢を示す傾向が続くかもしれません。

今後の課題としては、投資家の偏見を払拭し、女性の健康に関する知識の普及を進めることが重要です。また、企業や政府の支援を強化し、フェムテック分野のさらなる成長を後押しすることが求められます。セクシャルウェルネスに直結するフェムテックは、単なる技術革新に留まらず、社会全体の健康と福祉に寄与する重要な分野であるため、今後もその発展が期待されます。


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