スラップル(Throuple)とは?3人で付き合う新たな関係

公開日: 21/02/2025

Un couple qui s'est rencontré sur Noulib se donne la main

3人で付き合う新たな関係・スラップル。その関係は、2人が1人の相手を好きになるような三角関係や、パートナーに隠れてほかの相手と関係を築く浮気や不倫などとも異なる、新しい恋愛の形です。

この記事では、そんなスラップルの定義や関連用語、特徴についてまとめました。また、世界や日本におけるスラップルの認知度、問題点についても触れていきます。

スラップルの定義とは?

まずはスラップルの概要について見ていきましょう。以下ではスラップルの定義、不倫や浮気との違いについて解説します。

3人が恋愛関係にあること

スラップル(Throuple)とは、3人が恋愛関係にあることをいいます。3人を意味する「three」と、カップルを意味する「couple」を組み合わせた言葉で、後述するポリアモリーの一種です。別名「トライアド(Triad)」や「3人カップル」とも呼ばれます。

3人のパートナーがお互いに対等な恋愛関係を築く関係性が特徴で、近年このような多様なパートナーシップの形が世界中で認識されつつあります。

後述するヴィー(Vee)のように、恋愛関係は3人で構成されているけれども、一部はお互いに恋愛関係がないものとは異なります。

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不倫や浮気との違い

スラップルと聞いて、不倫や浮気を連想する人も多いかもしれません。

しかしスラップルは3人全員が関係に合意しており、オープンで透明な関係を築くことが一般的なため、パートナーを裏切り、隠れてほかの人と関係を持つような不倫や浮気とは異なります。

そのため、不倫や浮気のようにパートナーの誰かが傷ついたり、訴訟に発展したりなど、倫理的な問題も生じにくいといえます。

スラップルに関連する用語

ここからは、スラップルに関連する用語について解説します。

  • ポリアモリー
  • クワッド
  • ヴィー
  • モノガミー

それぞれの意味について詳しく見ていきましょう。

ポリアモリー

ポリアモリー(Polyamory)とは、複数の人と同時に恋愛関係を持つことを許容する、オープンかつ合意のうえで築かれる恋愛スタイルです。1人のパートナーシップに縛られず、複数の人に対して深い感情的・肉体的な関係を築きます。スラップルと同様、関係を持つ全てのパートナーが同意しており、隠しごとや裏切りがないのが特徴です。

ただしポリアモリーは下記のようにいくつかのタイプに分類され、スラップルと違って3人以上で関係が形成される関係性もあります。

  • ヒエラルキカル・ポリアモリー
  • ノンヒエラルキカル・ポリアモリー
  • ソロ・ポリアモリー

以下では、それぞれの意味や特徴について見ていきましょう。

ヒエラルキカル・ポリアモリー

ヒエラルキカル・ポリアモリー(Hierarchical Polyamory)は、複数の恋愛関係の中でパートナーに優先順位がつけられている形態です。この形態では、通常以下のような階層があり、それぞれのパートナーに異なる優先度が与えられます。

プライマリーパートナー:もっとも優先されるパートナーで、共同生活や結婚、子育てなど重要な人生の決断を共にすることが多い
セカンダリーパートナー:プライマリーパートナーよりも優先度は低いが、感情的・肉体的な関係を共有する

ヒエラルキカル・ポリアモリーでは、プライマリーパートナーがほかの関係に対して大きな影響力を持つ場合があり、関係のルールや制限が明確に決められることがあります。

ノンヒエラルキカル・ポリアモリー

ノンヒエラルキカル・ポリアモリー(Non-Hierarchical Polyamory)は、恋愛関係においてパートナー間に優先順位がない、対等なポリアモリー関係のことです。

この形式では、プライマリーパートナーやセカンダリーパートナーのような階層がなく、全ての関係は平等に扱われ、それぞれのパートナーが同じレベルの尊重や愛情を受けます。重要な決断や時間の配分も全てのパートナーに対して公平であり、対等に関係を深めていくことが特徴です。

ソロ・ポリアモリー

ソロ・ポリアモリー(Solo Polyamory)は、自己決定権や独立性を強く重視するポリアモリーのスタイルです。特定のパートナーに強く依存せず、自分の生活や独立性を維持しながら、複数の人との恋愛関係を築くことが特徴です。

ソロ・ポリアモリストは、通常はほかのパートナーと同居しない、または法的に結婚しないことが多く、自分自身の自由や生活を最優先します。複数人と恋愛関係を持ちながらも、自分自身の生活やプライベートな時間、目標を大切にすることを重視するため、ほかのポリアモリースタイルと異なる独立した価値観を持っています。

クワッド(Quad)

クワッド(Quad)は、4人が恋愛関係を持つ形態を指します。この関係では、4人全員が互いに恋愛や性的な関係を持っている場合もあれば、特定のカップル同士が交差的に関係を持っている場合もあります。クワッドもポリアモリーの一形態であり、複数のパートナーが感情的および身体的なつながりを持つことが一般的です。

2組のカップルが合流して4人で共同生活を始めるような場合や、関係を共有するカップル間で恋愛や性的なつながりを持つ場合など、さまざまなクワッドがいます。

クワッドは複数人の関係を調整する必要があるため、相互のコミュニケーションや合意が重要です。全員が対等であることが基本ですが、場合によっては異なる深さの関係が含まれることもあります。

ヴィー(Vee)

ヴィー(Vee)は、いわゆる三角関係の一形態です。スラップルとの違いは、1人の中心人物(ハブ)が、2人のパートナー(スポーク)とそれぞれ別に関係を持つ恋愛形態である点です。ハブと関係を持つ2人のスポーク同士は恋愛関係を持っておらず、共通点はハブとの関係を持っていることのみです。ヴィーという言葉は、この関係がアルファベットの「V」の形に似ていることに由来しています。

スポーク同士は恋愛や性的な関係を持たないため、ハブが各パートナーに対して異なる形で愛情や時間を共有しなければいけない点が、スラップルとの明確な違いです。

そのためハブの人物が2つの異なる関係をバランスよく維持することが求められますが、スポーク同士もこの関係を尊重し、互いの境界線を明確にすることが必要です。

モノガミー(Monogamy)

モノガミー(Monogamy)は、一対一の一般的な恋愛関係、または婚姻関係のことを指します。モノガミーにおいては、1人のパートナーと感情的および肉体的な関係を持ち、一生または長期間維持することを前提に関係が構築されます。この点がスラップルやモノガミーとの大きな違いです。

モノガミーは伝統的に広く受け入れられている恋愛・結婚の形態であり、多くの文化や宗教で理想とされることが多い傾向にあります。浮気や不倫は、モノガミーにおいて信頼を裏切る行為とされ、批判されます。

スラップルの特徴

ここからは、スラップの特徴について詳しく解説します。

  • 3人が対等な関係であること
  • 3人で一緒に過ごす時間が多いこと
  • オープンで率直なコミュニケーションを行うこと

それぞれについて知り、スラップルへの理解を深めていきましょう。

3人が対等な関係であること

スラップルの特徴のひとつは、3人全員が対等な立場で関係を築くことです。ヒエラルキカル・ポリアモリーやヴィーとは異なり、誰か1人がほかのパートナーよりも優位に立ったり、1人だけが恋愛関係を持たなかったりすることはありません。

全員が均等に愛情や時間、リソースを分け合い、どのパートナーも平等に大切にします。この対等性を保つために、全員が関係の中で対話と共感を持って接することが求められます。

3人で一緒に過ごす時間が多いこと

3人で一緒に過ごす時間が多いことも、スラップルの特徴です。デートや旅行、日常生活などを3人で共有することで、全員が一体感を持ち、関係を深めていきます。一対一での時間を過ごす場合もありますが、3人一緒の時間を意識的に作り出すことで、関係性がよりバランスよく保たれるよう工夫されることが多い傾向です。

オープンで率直なコミュニケーションを行うこと

スラップルでは、オープンで率直なコミュニケーションが不可欠です。複数人が関わる関係では、誤解や感情のすれ違いが起きやすいため、定期的に感情や期待を話し合うことが重要視されるのです。

どのパートナーも自分の感情や不安を正直に表現し、ほかの2人と共有することで、信頼関係を築きやすくなります。また率直なコミュニケーションが行われることで健全な関係が維持され、問題が発生しても迅速に解決できる環境が整えられます。

世界におけるスラップルの認知度

スラップルの認知度は、世界各国で徐々に広がりつつあります。欧米ではポリアモリーに対する理解が進んでおり、スラップルもその一形態として受け入れられています。とくにアメリカやカナダ、ヨーロッパの一部では、ポリアモリーのライフスタイルがメディアや学術的な議論を通じて紹介され、スラップルの関係を選ぶカップルも少なくありません。

たとえば妻ニコラ・ペルツを持つブルックリン・ベッカムは、歌手で女優のセレーナ・ゴメスと関係を持っていることを公表しています。ブルックリン・ベッカムとニコラは、セレーナ・ゴメスと一緒にホリデーを祝うなど、親しい関係にあるそうです。

またアメリカの「House Hunters(ハウス・ハンターズ)」という番組では、ブライアン、ロリ、ジェリというスラップルの3人組が登場し、話題を集めました。

このように、社会的に多様な恋愛の形が認められるにつれて、LGBTQ+コミュニティなどの一部ではスラップルやそのほかのポリアモリースタイルを受け入れる傾向が強まっています。

さらにSNSやオンラインのポリアモリーコミュニティを通じて、スラップルについての情報交換やサポートが行われることも増えています。

日本におけるスラップルの認知度

日本においては、スラップルの関係はまだ一般的に知られていません。日本の恋愛観は伝統的なモノガミーが主流であり、複数のパートナーを同時に持つことは社会的に理解されにくい傾向があります。

しかし、近年の多様性に対する関心の高まりや、SNSを通じた情報の共有により、一部の若年層や都市部の人々の間でポリアモリーのライフスタイルが注目されつつあることも事実です。

日本においてのスラップルはまだ少数ですが、メディアや本、漫画などでもポリアモリーやさまざまな恋愛形態が紹介され始めており、スラップルについても今後の認知拡大が期待されています。

スラップルの問題点

スラップルには、特有の問題点も存在します。

  • アンバランスな関係に陥るリスクがある
  • 周囲からの誤解や批判を受けやすい
  • 感情的・時間的な負担が大きくなる

アンバランスな関係に陥るリスクがある

想像にたやすいかもしれませんが、3人全員が対等な関係を保つことは簡単ではありません。感情のズレや価値観の違いから、一方的に誰かが優先される、または誰かが孤立してしまうリスクがあります。これを防ぐためには定期的なコミュニケーションが重要ですが、それでも全員が満足できる形を維持するのが難しいこともあります。

周囲からの誤解や批判を受けやすい

また、社会的な認知度の低さもスラップルの問題点です。スラップルの関係をオープンにすることで、周囲からの誤解や批判を受ける可能性があるでしょう。とくに家族や友人関係、職場の人からの理解が得られない場合、孤立感やストレスを感じることがあります。

また、法律的には一対一の結婚やパートナーシップしか認められないため、結婚や法的な権利を求める場合には問題が生じることもあります。

感情的・時間的な負担が大きくなる

モノガミーの恋愛形態に比べて、感情的・時間的な負担が大きくなる可能性があることもスラップルの問題点です。先述のとおり、3人全員が満足できる良好な関係を築くためには、それぞれの感情や価値観を理解し、歩み寄る必要があります。

しかしこれがうまくいかないと関係が不安定になってしまうでしょう。とくに独占欲や嫉妬が生じた場合、それを解決するには多大な努力が必要です。

まとめ

スラップルは3人全員が対等な恋愛関係を築くポリアモリーの一形態であり、お互いにオープンかつ率直なコミュニケーションを行うことで関係を保ちます。日本でも少しずつ認知されていますが、社会的な理解はまだ十分得られていないのが現状です。

しかし世界的には徐々に注目されつつあり、スラップルを実践するカップルも存在します。多様な恋愛の形が増えつつある現代において、正しい理解を広めていくことが私たちの課題となるでしょう。


自由恋愛

「自由恋愛」は、より「自由」な性の関係を意味します。従来の法律や倫理観に縛られることなく、複数者間の恋愛や性、性的嗜好などに正直であろうとする考え方であり、姿勢です。様々な価値観が認められる現在において、注目される「自由恋愛」について解説します。