オープンマリッジとは?両者の合意に基づく婚外交渉の始め方やルールについて

公開日: 06/06/2025

Un couple qui s'est rencontré sur Noulib se donne la main

結婚という枠組みの中、お互いの合意のもとで自由な恋愛や交流を許容する関係・オープンマリッジ。一夫一妻制が一般的な価値観とされる日本でも、個人の自由や多様な愛の形を尊重する新しい選択肢として徐々に注目されています。

本記事では、そんなオープンマリッジの定義やメリット・デメリット、始め方、ルールの例などを紹介します。また、実際に体験したことがある人の割合や、オープンマリッジについてより深く学べる本についてもまとめました。

オープンマリッジとは?

オープンマリッジ(=開かれた結婚)とは、夫婦間でお互いに同意したうえで外部の人との恋愛関係や性的な関係を認める結婚の形態を指します。一夫一妻制という伝統的な結婚観に縛られず、夫婦それぞれが個人としての自由を尊重しながら関係を築くという点が特徴です。

お互いの同意のもとで成立する関係のため、オープンマリッジを取り入れるうえでは信頼やコミュニケーションが不可欠です。欧米を中心に知られていますが、日本でも少しずつ注目されています。

卒婚との違い

卒婚とは、夫婦が婚姻関係を続けながらも、お互いに独立・自立したライフスタイルを追求することを指します。評論家である杉山由美子の著書「卒婚のススメ」によって2004年に提唱された概念であり、夫婦の同意やルールのもと成り立つ関係です。

オープンマリッジでも夫婦の婚姻関係は継続されますが、お互いが外部での恋愛関係や性的な関係を認めることに重きを置きます。一方、卒婚の場合は夫婦間の物理的・心理的距離を重視しつつも夫婦関係が破綻しているというわけではないため、第三者と自由に恋愛できるわけではありません。

不倫との違い

不倫は既婚者が配偶者に隠れて外部の人と恋愛関係や性的な関係を持つ行為で、配偶者の信頼を大きく裏切るものです。法律では不貞行為という用語が使われ、倫理的・法律的問題を伴うため、離婚や慰謝料請求、裁判などに発展するケースも少なくありません。

これに対し、オープンマリッジではお互いが事前に合意をとり、透明性も高いため、関係が隠されることがありません。倫理的な観点からは異なる位置付けにあり、離婚や慰謝料請求、裁判などに発展するケースは少ないといえます。

セカンドパートナーとの違い

セカンドパートナーは、既婚者が配偶者以外と特別な関係がある特定の相手のことです。この定義は曖昧で、夫婦の価値観や言葉の使い方、捉え方次第で意味が異なります。

交際する両者がプラトニックな関係であることを前提とする場合、不倫や不貞行為だとは見なされないケースが多い傾向にあります。しかし、配偶者の合意なくセカンドパートナーと性的な関係を持つ場合は、不倫や不貞行為と見なされることもあるでしょう。

一方で、オープンマリッジは夫婦間の明確な合意とルールのもとで成り立つ関係です。その中で恋愛関係や性的な関係がある特別な相手をセカンドパートナーと呼ぶこともありますが、合意があるため不倫や不貞行為には該当しないことがほとんどです。

ポリアモリーとの違い

ポリアモリーは特定のパートナーシップに縛られず、複数の人と同時に恋愛関係を築くライフスタイルです。関係を持つすべての人の合意に基づくため、透明性が高く、隠しごとや裏切りが少ないのが特徴です。

オープンマリッジも複数の関係を認めるという点が似ていますが、主軸は結婚関係を維持しながら外部の自由を認めることにあります。ポリアモリーではそれぞれのパートナーを独立した個人として尊重し、特定の相手だけを所有しない傾向にあるため、結婚という枠組みにとらわれないことがほとんどです。

オープンマリッジの歴史

オープンマリッジが注目を集めるようになったのは、1960~70年代のアメリカを中心とした社会変革期です。この時期、性革命やフェミニズム運動が進む中で、結婚の伝統的な枠組みを問い直し、新たな形を模索する動きが広がりを見せました。

1972年にネナ・オニールとジョージ・オニール夫妻の著書「オープン・マリッジ」が出版されたことも、文化に大きな影響を与えたきっかけのひとつです。夫婦間の自由と自己実現を重視し、透明性や信頼を基盤とする関係性を提唱したこの本は150万部以上を売り上げ、新しい結婚の形として注目を集めました。

オープンマリッジを実際に体験したことがある人の割合

2021年に実施されたノマドマーケティング株式会社のインターネットアンケートによると、1000名中42名の男女が「実際にオープンマリッジを体験したことがある」という結果が出ています。そのうち、オープンマリッジを体験したことがある男性は33人、女性は9人という結果になりました。

また、そもそも「オープンマリッジという言葉を知っていますか?」という設問に対しては約9割の男女が「知らない」と回答しています。この結果を見ると、日本における認知度や実践者の割合はまだまだ低いといえるでしょう。

オープンマリッジのメリット

オープンマリッジのメリットとして、以下が挙げられます。

  • お互いの価値観のもと自由に交際できる
  • 夫婦間でのトラブルになりにくい
  • 夫婦関係が改善される可能性がある

それぞれのメリットについて、以下で詳しく見ていきましょう。

お互いの価値観のもと自由に交際できる

オープンマリッジでは、夫婦それぞれが自分の価値観を尊重しながら自由に恋愛やコミュニケーションを楽しめます。婚姻関係を継続しつつも新たな出会いや経験を得られるため、束縛感や窮屈さ、孤独感などが軽減されます。他者との関係を通じて新たな刺激を得ることで、自己成長にもつながるでしょう。

夫婦間でのトラブルになりにくい

オープンマリッジでは夫婦間で事前にルールを定めるため、一般的な不倫のように隠しごとや裏切りが原因で信頼が損なわれることが少なく、トラブルにもなりにくいといえます。お互いに外部の関係をオープンに認め合うような透明性のある関係性を築くことで疑念や不安なども抱きにくくなり心の負担が軽減されるでしょう。

ただし嫉妬心を抱いてしまうことは少なくないため、その気持ちを隠さずパートナーと率直に話し合うことが大切です。

夫婦関係が改善される可能性がある

外部の関係を通じて新たな経験や学びを得ることで、夫婦間のコミュニケーションが深まることがあります。お互いに新しい刺激を受けたことがきっかけで、自分たちの結婚生活を見直し、よりよい関係を築くことにもつながるでしょう。また、相手への期待が適度に分散されることで夫婦間のプレッシャーが軽減され、感謝や尊重の気持ちを再確認する機会にもつながります。

オープンマリッジのデメリット

一方で、オープンマリッジのデメリットには以下のようなものがあります。

  • 法的リスクがある
  • 周囲からの理解を得ることが難しい
  • 夫婦関係が悪化するリスクがある

オープンマリッジの関係を築く前に、デメリットについても押さえておきましょう。

法的リスクがある

オープンマリッジは夫婦間の合意を前提としますが、第三者との関係が問題視される場合があるため注意が必要です。

とくに日本の法律では、配偶者以外との性的関係は不貞行為と見なされます。もともと合意があったとしても、後から「本心から合意していなかった」と言われてしまえば、法的リスクを負ってしまいます。

これにより慰謝料請求や離婚に発展する可能性もゼロではないため、お互いが合意している証拠を契約書に残すなど法律的な側面も考慮しましょう。

周囲からの理解を得ることが難しい

一夫一妻制という伝統的な結婚観が根強い日本では、オープンマリッジに対する周囲からの理解を得られにくい傾向にあります。家族や親しい友人であっても、カミングアウトの際に反発や疑念を抱かれる可能性があることは理解しておきましょう。

そのため、社会的な孤立感を感じたり周囲との関係がぎくしゃくしたりするリスクが伴います。周囲からのサポートを得にくい環境では、夫婦間の関係維持が難しくなることもあるため、注意が必要です。

夫婦関係が悪化するリスクがある

オープンマリッジは透明性や信頼関係が基盤となる関係のため、良好な関係を築くことが難しいと感じるケースもあります。とくにルールが曖昧なまま進行すると、第三者との関係が深まりすぎたり、配偶者を傷つけてしまったりと、夫婦間に亀裂が入るリスクがあります。

また、時間の経過や環境の変化などでお互いの考え方や価値観が変化することもあり、オープンマリッジという選択を後悔したり、途中でやめたいと思ったりする可能性もゼロではありません。

このように結婚生活自体が破綻するリスクがあるため、慎重に検討することが大切です。

オープンマリッジの始め方

ここからは、オープンマリッジの始め方について以下の4ステップに分けて解説します。

  1. パートナーに提案する
  2. ルールを設定する
  3. お互いの合意・ルールを書面に残す
  4. オープンマリッジの相手を探す

それぞれについて、以下で詳しく見ていきましょう。

パートナーに提案する

まず、オープンマリッジについてパートナーに提案し、話し合いましょう。提案の際には「自分がなぜこの形態を望むのか」「どのようなメリットがあるのか」などを明確に説明することが大切です。また、相手の感情にも配慮し、しっかりとパートナーの意見を聞きましょう。

ただしこの提案によってパートナーから不信感を抱かれる可能性もあり、場合によっては離婚や距離を置くことを提案されてしまう可能性もあります。心配な場合は、時間をかけてお互いの考えや価値観を共有し合う姿勢を持つことから始めましょう。

ルールを設定する

オープンマリッジを進めるには、夫婦間での明確なルール設定が不可欠です。たとえば「どの程度の外部関係を許容するのか」「相手に報告するべき内容や頻度」「どのような行動が夫婦間の信頼を損なうのか」などを具体的に話し合いましょう。

ルールが曖昧なままだとトラブルの原因になるため、双方が納得できる形で合意することが重要です。また、ルールは必要に応じて柔軟に見直すことも大切です。

お互いの合意・ルールを書面に残す

夫婦間の合意内容やルールを明確にするため、書面に残しておくことをおすすめします。たとえば「お互いがオープンマリッジに合意していること」「慰謝料の請求をしないこと」といった合意内容のほか、あらかじめ決めたルールを記載するといいでしょう。

書面化することで双方の責任や義務が明確になり、ルールを守る意識が高まります。また、誤解やトラブルのリスクを未然に防ぐことにもつながります。

オープンマリッジの相手を探す

オープンマリッジの相手を探す際には、慎重に選ぶ必要があります。信頼できる相手や、近しい価値観を持つ相手を選ぶことが大切です。

通常の恋愛では自由な条件で相手を選ぶことができますが、オープンマリッジの場合はお互いの条件に基づいたルールを守ったうえで選ぶことが必要になるケースもあります。たとえば「同じ職場やコミュニティの相手と交際しない」「オープンマリッジに合意できる相手を選ぶ」といったルールがあれば、それに基づかなければなりません。

オープンマリッジにおけるルールの例

オープンマリッジのルールは夫婦での合意のもと自由に設定できますが、一般的なルールの例は以下のとおりです。

  • オープンなコミュニケーションを心がける
  • 相手のプライバシーを尊重する
  • オープンマリッジの相手に本気にならない
  • オープンマリッジの相手を吟味する
  • 避妊を徹底する
  • 性感染症の予防・検査を徹底する
  • 時間やお金の使い方を決めておく

上記を参考にして「夫婦の信頼関係を損なわないか」「安心感や透明性を保てるか」といった観点からルールを決めるとよいでしょう。

また定期的にルールを見直し、それぞれの夫婦の形に沿うものを設定することが大切です。

オープンマリッジについて学べる本

ここからは、オープンマリッジについて学べる本を2冊紹介します。

  • オープン・マリッジ
  • ポリアモリー 複数の愛を生きる

より体系的に学びたい方や、実践を考えている方は、ぜひ参考にしてください。

オープン・マリッジ

ネナ・オニールとジョージ・オニール夫妻の著書「オープン・マリッジ」は、オープンマリッジの概念を広めた先駆的な本です。この本では、夫婦の自由や自己実現を追求しながら、結婚生活を維持する方法について具体的に解説されています。オープンマリッジを検討している人や新しい結婚観を学びたい人にとっては必読の価値があるといえるでしょう。

ポリアモリー 複数の愛を生きる

深海菊絵の著書「ポリアモリー 複数の愛を生きる」は誠実に複数の人を愛するという特定複数の恋愛の形について迫った本です。嫉妬や信頼、透明性など、複数の愛を実践するうえで直面する課題とその解決方法についても詳しく紹介されているため、オープンマリッジを実践する際にも参考になるでしょう。

まとめ

オープンマリッジは、夫婦間の信頼と合意のうえで成り立つ新しい結婚の形態です。外部との関係を認めることで、結婚の束縛感や窮屈さ、孤独感から解放され、新たな経験や学びを取り入れることができます。また、感謝や尊重の気持ちを再確認する機会にもつながります。

しかし法的リスクや周囲からの偏見、夫婦関係の悪化といったリスクが生じる可能性もあるため、明確なルールを設定し、定期的に話し合いを行うことが重要です。

多様な愛の形を受け入れ、結婚生活をより豊かにする選択肢として、オープンマリッジは今後さらに注目されていくでしょう。


自由恋愛

「自由恋愛」は、より「自由」な性の関係を意味します。従来の法律や倫理観に縛られることなく、複数者間の恋愛や性、性的嗜好などに正直であろうとする考え方であり、姿勢です。様々な価値観が認められる現在において、注目される「自由恋愛」について解説します。