広がるソーバーデーティング| お酒なしで私たちは自然に距離を縮められるのか

公開日: 02/12/2025

お酒を飲まないデート(ソーバーデーティング)が広がり、特に若い世代ではそれがごく普通になりつつあります。これまで多くの人が、お酒の力を借りて緊張をほぐし、相手との距離を縮め、気持ちを伝えてきました。では、その支えがなくなったとき、デートはどんな表情を見せるのでしょうか。ここでは、お酒を介さない親密さが生む独特の緊張と、「素の自分」で向き合うということについて考えます。

デートの風景は大きく変わっています。グラスに入るのはワインではなく炭酸水やコンブチャで、酔った勢いでの失敗や翌朝の後悔も減りました。お酒に頼らず惹かれ合い、そのやり取りを翌朝まではっきり覚えていられるような関係が増えています。ただ、お酒がくれる“気楽さ”を手放すことに不安を覚える人も少なくありません。長いあいだ、お酒はデートを進めるための心強い味方だったからです。

では、酔わないまま相手と向き合うデートでは何が起きるのでしょうか。

アルコールは、現代のデートにおいて半ば前提のように存在してきました。一緒に飲むことが「心を開いている」という合図になり、一口飲むしぐさが「興味があります」というサインとして働いてきました。距離を縮める場面では、お酒に頼るという感覚のまま大人になった人も多いのです。声のトーンが変わり、普段言わないことを口にし、触れ合うタイミングが早まるという“お酒とセットの距離感”に慣れていた人は少なくありません。

変化が起きている背景

今、お酒を控えることは節制ではなく生き方の選択になっています。Z世代の飲酒量はミレニアル世代より2〜3割少ないといわれ、東京やパリ、ロサンゼルスではノンアルコミュニティが広がっています。求められているのは、頭の冴えやすっきりとした感覚、相手と向き合うときの誠実さです。肌や睡眠の調子が良くなると感じる人もいます。

アプリはノンアルのライフスタイルを後押しし、バーではノンアルスパークリングやCBDドリンクが自然に並ぶようになりました。それでも、緊張が消えるわけではありません。

しらふで距離を縮めるということ

一方でお酒に頼れない場合、ためらいや恥ずかしさが直接感じられてしまうというデメリットがあります。

・冗談が本当に面白くないと伝わらない
・手が偶然触れただけで、意図があるように感じさせてしまう
・目が合う時間が長くなり、緊張も強くなる

酔わずに相手と向き合うのはたしかに難しいものです。けれど、お互いの反応が曖昧にならないため、やり取りはより本音に近づくことはメリットと言えるでしょう。

お酒なしのデートは、気まずさや緊張をそのまま感じる時間になります。人見知りの人、完璧主義の人、自分をよく見せたい人にとっては、なおさら大きなハードルになるかもしれません。しかし、こうした緊張は、本来どんな距離の縮まり方にもある自然な感覚です。

酔わずに相手の目を見つめ、その言葉を聞き、反応し、記憶に残す。そんな姿勢には独特の魅力があります。深夜の勢い任せのメッセージではなく、はっきりとした意識のまま伝える「惹かれています」という気持ち。ノンアルのデートは、相手とのやり取りそのものに意識が向きやすくなり、会話や仕草が、酔いに流されずはっきり感じられます。

しらふでのセックスという新しい体験

実際には、セックスをする際にはお酒に頼ってしまうという人もいるでしょう。お酒は不安をぼかし、緊張を取り除いてくれるからです。

しかしお酒を飲まずに生まれる親密さは、心理的な意味で“裸”に近くなります。感覚が鋭くなり、時に圧倒されることもありますが、多くの場合はむしろ鮮明で、納得できる体験になります。何に同意しているのかがはっきりしており、演じる必要もありません。

もちろんこうしたことがすべての人に当てはまるわけではありません。それでも、お酒に頼らず向き合うことを好む人は確実に増えています。二日酔いも、後悔も生まれにくく、うまくいけば良好な縁が残るでしょう。

距離を縮める本質は、もともと飲み物にあったわけではありません。お酒に背中を押されて初めて言えた言葉こそが、本来の気持ちだったからです。今、私たちはそれを素面のまま伝える方法を学びつつあります。

この冬、一度ノンアルのデートを試してみてください。
惹かれ合う感覚がぼかされるのではなく、むしろ鋭く立ち上がる瞬間に気づけるかもしれません。


自由恋愛

「自由恋愛」は、より「自由」な性の関係を意味します。従来の法律や倫理観に縛られることなく、複数者間の恋愛や性、性的嗜好などに正直であろうとする考え方であり、姿勢です。様々な価値観が認められる現在において、注目される「自由恋愛」について解説します。