アロマンティックとアセクシャルとの違いは?広がる多様性とその生き方
公開日: 26/03/2025
公開日: 26/03/2025
恋愛的指向のひとつ、アロマンティック。他者に恋愛感情を抱かないというその指向は、日本の作品やメディアでも取り上げられるようになり、徐々に認知度や理解度が高まってきていると言えます。
しかしアセクシャルとの厳密な違いや、考え方などに疑問を持っている人も多いのではないでしょうか。そこでこの記事では、アロマンティックとアセクシャルとの違いのほか、その歴史や関連書籍についてまとめました。また、アロマンティック・アセクシャルの人たちが求める関係性にも触れていきます。
アロマンティック(Aromantic)とは、他者に恋愛感情を抱かない、他者に恋愛指向が向かない人のことを指します。
ただしアロマンティックそのものに厳密な定義はなく、すべてのアロマンティックが同一の恋愛観を持っているわけではありません。
そのため、友情や交流を大切にしつつも他者から恋愛感情を持たれると嫌悪感を覚える人、恋愛感情がないことが自然であると感じる人など、恋愛に対する価値観はさまざまです。
なお「宗教の理由で恋愛ができない」など本人の事情で恋愛を遠ざけている場合は、アロマンティックには該当しないと言われています。
アロマンティックとよく混同されがちな概念として「アセクシャル(Asexual)」が挙げられます。このアセクシュアルとは、他者に恋愛感情も性的欲求も抱かないセクシュアリティのことです。
アロマンティックは恋愛感情は抱かないものの、性的欲求を抱くことはあるため「他者に性的欲求を抱くかどうか」がアセクシャルとの大きな違いです。
実際にアロマンティックとアセクシュアルの当事者1,685人を対象にした「アロマンティック/アセクシュアル・スペクトラム調査2020」によると、「ほかの人とセックスをしようと思うか」という問いに対して「ない」「あまりない」と回答した割合が一番高かったのはアセクシュアルで9割以上でした。
また「自分に性欲があると思うか」という質問に対して、アセクシュアルは「思う」と回答した割合がもっとも低く41.2%、「やや思う」と回答した割合は25.1%でした。
この結果からも、アロマンティックとアセクシャルの違いは、「他者に性的欲求を抱くかどうか」だと言えます。
「自分がアロマンティックかどうか知りたい」「アロマンティックに診断方法はあるの?」と気になっている方に向けて、アロマンティックの特徴をまとめました。
とはいえ「これらの項目にすべて当てはまる人=アセクシャル」「何点か当てはまる人=アセクシャルではない」といった定義が存在するわけではないため、あくまでも参考程度にしてください。
アロマンティックの概念が生まれたのは比較的近年ではありますが、その歴史や背景には現代の性的指向・恋愛的指向に関する議論やムーブメントの発展が関係しています。また、アロマンティックが登場した背景には、先述したアセクシャルも関連しています。
それぞれの歴史について、以下で詳しく見ていきましょう。
1879年、性科学者でゲイ権利運動の先駆者であるカール・ハインリッヒ・ウルリッヒスにより「性愛」と「恋愛」を分ける考えが提唱されました。
このことをきっかけに、ウルリッヒスを含む多くの哲学者や心理学者が性的指向や人間の感情の多様性に注目。アロマンティックやアセクシャルに関する議論の基盤となりました。
100年後の1979年には、ロマンティックな魅力に対する感情の起伏がないことを意味する「Non-Limerent(ノン・リメラント)」という考えが登場しました。
また2000年から2005年ごろ、LGBT運動によって恋愛的な魅力(ロマンティック・アトラクション)と性的な魅力(セクシュアル・アトラクション)を別々に考える「Split Attraction Mode(SAM/スプリット・アトラクション・モデル)」という考え方が浸透。これにより、他者に恋愛感情や性的欲求を抱かない「アセクシャル」に注目が集まり、「性的指向」と「恋愛指向」は区別されるべきでないかという議論が持ち上がります。
この議論の中で、他者に恋愛感情を持たないものの、性的な交流を求める人もいると結論づけられ、最終的に「アロマンティック」という概念が生まれました。
この項目では、現代の日本におけるアロマンティックとアセクシャルについて見ていきましょう。
アロマンティックやアセクシャルに関連したテーマを扱う日本のメディアや作品は、海外に比べるとまだ少ない傾向にあります。
しかし2022年には主人公たちが恋をしないというストーリーのNHKドラマ「恋せぬふたり」が放送され、恋愛や結婚に縛られない生き方を見据える人々に共感を与えました。
また、漫画やアニメの中にも恋愛関係を結ばない、または恋愛に関心を示さないキャラクターが登場することがあり、ファンの間で「このキャラクターはアロマンティックかもしれない」と議論されることも増えるようになってきました。
そのほかにもアロマンティックやアセクシャルの人へのインタビューやアンケートを公開するメディアなども増えてきており、徐々に認知度や理解度が高まってきていると言えます。
日本ではLGBTQ+を支援するNPOや団体が増えており、その中でアロマンティックやアセクシュアルのアイデンティティについても言及されるようになってきています。
たとえば「認定NPO法人 虹色ダイバーシティ」や「プライドハウス東京」「As Loop」などの団体は、性的指向や恋愛指向の多様性を包括的に支援。その一環として、アロマンティックやアセクシュアルの理解促進にも取り組んでいます。
また、恋愛を伴わない結婚をサポートする友情結婚相談所をはじめ、新たなサービスやプラットフォームづくりに取り組む一般企業も増えるようになってきました。
三宅大二郎著「いちばんやさしいアロマンティックやアセクシュアルのこと」は、その名のとおり誰でも気軽にアロマンティックやアセクシャルの世界に触れられる入門書です。
基本的な知識についてQ&A形式で紹介されるほか、当事者お話し会レポート、関連調査の結果などが紹介されており、アロマンティックやアセクシュアルについて全く知らない人でも読みやすい工夫がされています。
松浦優著「アセクシュアル アロマンティック入門」はアロマンティックやアセクシャルについて書かれた新書です。2025年2月に発刊されました。歴史や関連用語などが解説されており、アロマンティックやアセクシャルの経験や置かれている状況が解説されています。
先述したとおり、すべての人が同一の恋愛観を持っているわけではありません。
しかしアロマンティック・アセクシャルの人たちが求めるのは、「恋愛」や「性的」な枠組みとは異なり、感情的なつながりや友情、信頼を基盤にした関係であることが多い傾向にあります。
この項目では、それぞれの関係性や生き方について詳しく見ていきましょう。
恋愛感情や性的欲求がない場合でも、日常生活の中でのパートナーシップや友情など、強い絆や感情的なサポートを望む人は多くいます。このようなプラトニックな関係は、古代ギリシャの哲学者プラトンの考え方に由来しています。
恋愛的・性的な欲望や感情を超越した、精神的な愛や友情を重視するプラトニックな関係では、長期にわたる友情や信頼に基づいて発展することが多いため、関係が安定しているケースが多いです。
「Queer Platonic(キュー・プラトニック)」とは、アロマンティックやアセクシュアルのコミュニティでよく使われる用語です。
通常の友情を超えるほど親密で、恋愛とは異なる独自の感情的な関係を指します。その親密さや絆の深さが恋愛関係に似ていることもありますが、恋愛感情や性的関係を含みません。
たとえば、共に暮らしたり、将来を共にしたりすることができる相手を求めつつも、恋愛や性的要素がない関係を大切にする人がその一例です。
従来の恋愛や結婚という枠組みにとらわれず、自分のニーズや価値観に基づいた独自の関係を築く人もいます。
たとえば子育てをしたい場合に信頼できるパートナーや友人と協力して家庭を作る人や、交際はせず信頼できるパートナーとのセックスや恋愛的なパートナーシップを求める人が一例として挙げられます。
アロマンティックやアセクシャルの人は、特定のパートナーや親密な関係を求めず、自己充足的な生き方を選ぶこともあります。
例として、自分のキャリアや趣味、心身のバランスを保つためのセルフケア、コミュニティとの繋がりなどに集中し、自分自身の幸福や満足感を大切にするような人が挙げられます。一人暮らしを好み、自分のペースで生活することに満足感を見出す人もいるでしょう。
他者に恋愛感情を抱かない、他者に恋愛指向が向かないアロマンティック。よく混同されがちなアセクシャルとの違いは「他者に性的欲求を抱くかどうか」にあります。
プラトニックな関係やキュー・プラトニック関係、選択的パートナーシップ、自己充足的な生き方など、アロマンティック・アセクシャルの人たちが求める関係性や生き方は多様です。
「みんな恋愛や性的なことに興味があるもの」「好きな人とはセックスしたくなるもの」といった価値観は、従来のものへと変化しつつあります。
日本でも恋愛を伴わない結婚をサポートする結婚相談所が登場するほか、恋をしない主人公が登場するドラマ、アロマンティックやアセクシャルについて取り扱う書籍なども増えています。ぜひこれらに触れて、正しい知識や理解を広げていきましょう。
出典
Aro/Ace調査実行委員会「アロマンティック/アセクシュアル・スペクトラム調査2020」
「自由恋愛」は、より「自由」な性の関係を意味します。従来の法律や倫理観に縛られることなく、複数者間の恋愛や性、性的嗜好などに正直であろうとする考え方であり、姿勢です。様々な価値観が認められる現在において、注目される「自由恋愛」について解説します。