ハリウッド映画でセクシーな描写が再び注目 日本でもLGBTQの映画や恋愛リアリティショーが次々と放映

公開日: 19/03/2025

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セクシーで官能的な映画が米国で再び評価され始めているようです。米国では大規模な映画祭で過去の官能的な映画を30本上映する回顧展が開かれ、ハリウッド映画では、直接的な描写はなくとも、激しくセックスしていることを想像させるような映画が次々とヒットしています。

ハリウッドがセクシーさをスクリーンに求める

「インディペンデント・フィルム・フェスティバル(IFF)ボストン」は2024年7月、米サマービルシアターで1980年代と90年代に公開された約30本の官能映画を上映する6週間の回顧展「ホット・サマー・ナイツ」を開催しました。

IFFボストンのエグゼクティブディレクター、ブライアン・タム氏は、「ホット・サマー・ナイツ」で回顧展を開催することについて「ハリウッドが大人向けの映画を作っていた時代について考えるのは興味深い」と語るように再評価の動きが出てきているようです。

ホット・サマー・ナイツではポール・シュレイダー監督の「アメリカン・ジゴロ」の上映で始まり、8月31日に日本でも大きく話題となった「アイズ・ワイド・シャット」で終わりました。日本でも2023年にレストア版が公開された「氷の微笑」の1992年版も放映されました。氷の微笑はシャロン・ストーンが取調室で足を組みかえるエロティックなシーンが話題となったことで知っている人も多いことでしょう。

米ボストンのラジオ局であるWBURはこのホット・サマー・ナイツを紹介する中で「この回顧展で最も衝撃的なのは、かつてR指定のコンテンツがいかに一般的だったかということだろう」とエロティックなシーンがある映画が文化の一つだったことを強調。ただの猥褻な映画と判断するのではなく、歴史的な出来事だったと再評価しています。

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ハリウッドでセクシーシーンが注目

さらに大手メディアのガーディアンが同年6月に報じたように、ハリウッドで再びセクシーシーンが注目を集めています。

リチャード・リンクレイター監督の新作コメディ『ヒットマン』の成功について、ガーディアン誌は、「その成功の要因の大部分は『禁じられた魅力』にある」と指摘しました。
『ヒットマン』は、ハリウッドがセクシーさ、そして必ずしも実際のセックスではないが、スクリーンに戻そうとしていることを示唆する今年の最新映画だ。これは、スーパーヒーロー映画の疲れ、スクリーン上で年々セックスレスとなっていること、それに合わせて定期的な興行収入が低迷していることが背景にある。

ヒットマンは偽の殺し屋に扮したおとり捜査官として警察に協力した人物の実話にインスパイアされた作品です。主演俳優のグレン・パウエル演じるゲイリーは、ニューオーリンズの30代の心理学教授でありながら、裏ではヒットマンのふりをしています。殺人の依頼者を捕まえるためにさまざまな姿や人格に変身する才能を発揮し、有罪判決を勝ち取るための証拠を引き出し、次々と逮捕へ導いていきます。

このゲイリーが、DV夫との生活に追い詰められた女性・マディソン(アドリア・アルホナ)から、夫の殺害を依頼されるのですが、本来であれば、ゲイリーが逮捕すべきこの女性と燃え上がる恋に落ちるという描写によって、セクシーでスリリングなクライム・コメディとして楽しめる映画です。

この映画は、ハリウッドが長く抱いてきた冷酷な殺し屋への魅力だけでなく、1940年代のスクリューボールコメディ(常識にとらわれない登場人物、テンポのよい洒落た会話、つぎつぎに事件が起きる波乱にとんだ物語などが主な特徴)、90年代の華やかなロマンティックコメディ、そしてゲイリーの唖然とする欲望やマディソンの不可解な動機を通じて、80年代のエロティック・スリラー『ボディ・ヒート』の絶頂期を思い起こさせるものとなっています。

パウエルは、シドニー・スウィーニーと共演したヒット作『Anyone But You』で主演を務めていますが、このR指定のロマンスコメディは口コミとTikTokで2億1,900万ドルを稼ぎ出しました。

日本ではLGBTQを描く映画やリアリティショーが注目を集める

日本では、性的な描写の映画というよりは、ゲイやレズビアンを描いたドラマや映画が近年では次々とヒットしています。同性愛をライトに描いた「おっさんずラブ」や、よしながふみ原作の同名漫画「きのう何食べた?」は、お茶の間に広く受け入れられました。

ただし、2018年に始まった「おっさんずラブ」ではコミカルに、2019年に放映開始(原作は2007年)した「きのう何食べた?」でもパートナー関係としてあくまでゲイなだけであって、「人が人を好きになる」ということを描いています。ゲイカップルの日常を描きつつも過激な描写は表現されていませんでした。

しかし、一方で、最近ではゲイのセックスや絡みを描く作品も出てきています。

2020年に公開された行定勲監督の「窮鼠はチーズの夢を見る」では、女性からの人気が高い俳優をキャスティングしました。しかしそこで描かれたのはロマンティックなボーイズラブではなく、鼠蹊部と臀部がぶつかる音が描写されるゲイのセックスです。この映画はR15指定ながらも、3日間で10万人を超える動員数を記録する大ヒットを記録しました。

2023年には東京国際映画祭で高い評価を得た「エゴイスト」もR15指定ながら興行収入3億円を達成し、大きな話題を呼びました。

2024年7月にはネットフリックスで放映が開始した日本で初めてのゲイやバイセクシュアル男性による恋愛リアリティショーである「ボーイフレンド」も大きな話題を集めています。

さらにレズビアン映画に関しても、日本で大きく変化を見せていると言えます。青土社発行の雑誌「現代思想」に故河野真理江氏が寄稿した「映像メディアにおける同性愛表象の現在」では、ネットフリックス配信の映画「彼女」(2021年公開)が「最も最先端のレズビアン・ムービー」と評しました。

日本ではレズビアンを描いた映画はこれまで男性向けのポルノとして展開してきましたが、「彼女」にはポルノ的要素を廃し、女性同士の性愛を描いていており、エンディングも悲痛な描写で終わるなど、社会的な要素を多分に含みました。

ただし、河野氏は「彼女」で示された以上にレズビアンの可能性は多様だとしており、日本で様々な映画が今後も出てくることが望まれています。

この映画は主演の水原希子さんがインティマシー・コーディネーターを導入したことでも話題となりました。

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映画へのセクシーシーンの渇望

国内外を含めて、多様な性が描かれ、その中でもR指定がある映画がヒットし、セクシーさが話題となる映画が注目されているのは、再び人々がそうした欲望を欲している状況になっていると言えるのではないでしょうか。

「君の名前で僕を呼んで(Call me by your name )」のルカ・グァダニーノ監督の新作映画『チャレンジャーズ』(2024年4月イタリアで公開)では、テニスプレイヤーのタシ(ゼンデイヤ)、アート(マイク・フェイスト)、パトリック(ジョシュ・オコナー)との間で三角関係が示唆されたことが、インターネットを騒がせ、劇場では「スループル(三人組の恋愛関係)割引」チケットが販売されるまでに至りました。

さらにAmazonプライムのオリジナル映画「The Idea of You」では、アン・ハサウェイ演じる40歳のシングルマザーがニコラス・ガリツィン演じる人気ボーイズグループ、オーガスト・ムーンのリードボーカルで24歳のヘイズ・キャンベルとベッドシーンが描かれています。

『チャレンジャーズ』も「The Idea of You」もどちらもそれほど生々しいセックスシーンが描かれているわけではありませんが、『チャレンジャーズ』の登場人物は汗だくになりながら、(実際には映しているわけではないものの)まさにセックスの興奮を描いています。そうした実際の描写よりも明らかに想像を掻き立てられる魅力ある映像となっています。

さらにこれらの映画ではある種、批判に晒されやすい恋愛を描いています。『The Idea of You』では女性蔑視的なオンライン批判にさらされる異常な関係、『ヒットマン』では「殺し屋」とそれを雇う者の関係、『チャレンジャーズ』では複雑な三角関係の絡み合いとなり、私たちが生きる現在では様々な恋愛関係にあると言えるでしょう。
日本でも過去のようなポルノ映画ではなく、著名俳優が出演し、明らかにエロティックな作品というものではなく、快楽や美しい主人公や出演者たちのやり取りを描いたこうした作品が増えていることは注目すべき現象ではないでしょうか。

私たちの大きな娯楽であり、その中でも多くの人々に影響を与える映画作品でこうした描写が増えていることは、喜んで受け入れるべきトレンドでしょう。


自由恋愛

「自由恋愛」は、より「自由」な性の関係を意味します。従来の法律や倫理観に縛られることなく、複数者間の恋愛や性、性的嗜好などに正直であろうとする考え方であり、姿勢です。様々な価値観が認められる現在において、注目される「自由恋愛」について解説します。